グランドピアノ〜狙われた黒鍵〜
Grand Piano/監督:エウへニオ・ミラ/アメリカ・スペイン合作
ダラス・バイヤーズクラブを観たときに予告で流れて面白そうだな、と思い観に行ってきました。イライジャ・ウッドは「マニアック」で私の中の信頼できる男リストに入ってますし、なによりチラッと出る犯人役のジョン・キューザックの悪そうな顔がよかったじゃないですか。実は私、何故かキューザックに過剰に惹かれるところがあるのですが、それを話すと長くなりそうなのでやめておきます。
それで、「1音でも間違えたら殺される」という緊迫したフレーズに心惹かれて映画館に足を運んだわけですが。
これが予想を裏切ってすごいバカだった。思わず感想書きたいと思ってしまうくらい。
あらすじ:過去にミスをしたのをきっかけに舞台恐怖症になって5年間表舞台に出て来なかった主人公(イライジャ・ウッド)が恩師の追悼コンサートに引っ張り出されることになったが、いざコンサートが始まると楽譜に「1音でも間違えたら殺す」という脅迫文がありーーー
とざっとこんなお話です。
面白そうでしょう?実際とても面白かったです。でも面白さの方向性が想像していたのと全く別ものでした。
まず、主人公のイライジャは若い天才ピアニストでありながら過去のミスにより舞台恐怖症で、今回の追悼コンサートに来るにも「飛行機に不備があればよかったのに」「ピアノの調子が悪くて延期になればいいのに」「会場に着くまでに車が事故ればいいのに」と最後までぐずぐずしてます。
ぶっちゃけ映画が始まってから終わるまでイライジャは眉を下げて不安そうな顔をしてます。しかしこれはとてもかわいい。
コンサートでイライジャの弾くピアノというのが、恩師が作った世界に一つだけのピアノでですね、しかもなにやら大仰な仕掛けがあるらしいのです。
その仕掛けのためにイライジャを狙うのが犯人のキューザック。この犯人がね、もうホントすっげーバカ。
犯人の目的はイライジャに「ラ・シンケッテ」というイライジャにしか弾けないとされる超難曲を弾かせること。過去にミスして舞台恐怖症になるきっかけになった曲です。
この曲を弾かせるためにあの手この手で脅しをかけてくるキューザック。だんだん脅されてるイライジャよりもテンパってくるのが面白かったです。
「助けを呼んだら妻を殺す」と言われているのでなんとかしてキューザックにバレないように助けを呼ぼうと一人であたふたするイライジャが楽しかったですね。自分のパートが終わると突然舞台を降りて裏を走り回ったり、ピアノ弾きながら隠した携帯を操作したり。この辺りのあたふた感は完全に分かってやってるギャグで笑えました。
ピアノ弾きながらポケットから携帯取り出して楽譜の裏に隠してめっちゃキーを打ったりしてるんだよ。最高。あれだけ「どこにいても見える」とかどやってたキューザックがこの明らかに不審な動きを見逃してる辺りもバカでしたねー。
このキューザック、演奏中のイライジャにとにかく話しかける。「1音でも間違えたら殺す」とか言ってるわりにめっちゃ積極的にイライジャの集中力を削ぎにいくわけです。しかも最後にはついに「黙れ!」って言われちゃうしね。そりゃそうだわ。
弾く予定のなかった「ラ・シンケッテ」をついに弾く展開になるとキューザックの鬼コーチっぷりが炸裂します。「力が入り過ぎだ」「最後まで力を溜めておけ」「最後が肝心だ」こ、こいつうるせえ…
ピアノの演奏のことは良く知らないはずなのにインカム越しにめっちゃ指示出してくるキューザック。「お前のことは俺が一番良く知ってる」とか「俺のために弾け」とか言っちゃうキューザック。そしてイライジャに「観客のために弾く」とばっさり振られるキューザック。
お前…なにがしたかったんだよ…
いや、したいことは分かる。でももっと色々方法あったんじゃない?あ、あれか?世界で一人にしか弾けない曲って設定でテンション上がっちゃったのかな?
突っ込む所が多いというか、突っ込む所で構成されているような映画でしたが、本編が短いということもあり疾走感は最後まで削がれることはありませんでした。あと撮り方がかっこいいので話はバカなのにぐっと惹き付けられるシーンが何カ所もありましたね。もうそれだけで十分です。
コンサート中に起こってる事件なので、流れている音楽は全てコンサートで演奏されている曲ということになります。その音楽の盛り上がりと映画の盛り上がりが重なると観ていて気持ちよかったですね。
ラストは結構ばっさりと終わるので物足りなく思うかもしれませんが、私はいいと思います。ああいう切れ味、嫌いじゃない。
現段階今年最高のバカ映画、映画館で刮目せよ!